お仕事ファイル 第4回

アニメ監督
越智 博之
おちひろゆき・第5期生

第4回目は、アニメ監督として活躍している5期生の越智博之さん。代表作「太陽の船ソルビアンカ」は海外でも高い評価を得ています。(取材2001.08杉山+杉村)


この世界にはいったきっかけは?

高校のころにアニメ・ブームがありまして、そんななかで『機動戦士ガンダム』っていう作品と出会ったんです。「アニメでもこんなことができるんだ」っていうような、いろいろな制限を突破しようという意志が表われていたんで、影響を受けましたね。

絵を描き始めたのもそのころですか?

そうですね。最初は漫画家になろうと思ってたんです。松本零士さんとかつのだじろうさんにハマッてたんです。あとは大友克洋さんですね。

高校卒業後は?

美術系の専門学校に進んだんですが、「やってることが違うなあ」とも思ってたんで在学中から業界に入ったんです。ダラダラしてるよりはいいと思って、自分で飛び込んだ形ですね。

それからは?

そこにいた上司がつくった会社に移って…それからこの会社にきたっていうかんじですね。ここには10年くらいいますけど、やりたいことをゲリラ的に実現できるところがいいと思っています。

壁にぶつかったことは?

「自分は天才だ」とか思っていたのが、業界に入ってみるとそうでもなかったと感じたときでしょうね。学生のころは、どう考えたって自分はいちばん(絵が)うまいと思えるわけです。

実際にどうだったかはともかくとしても、なんたって周りはみんな素人ですからね。

でも、アニメ会社に入るとみんなうまいんですよ。当たり前なんですけど、そのときにはじめてわかったんですね。そこではみんな自信があって、みんな自分は天才だと思ってる。そうなると(焦って)思うような結果 も出ないし、大変な世界だったんだなあって実感して…。自分で壊さなければならない壁にぶつかったってかんじでしたね。


逆に「続けていてよかった」と思えるときは?

それはやっぱり作品ができたときですね。人に「見たぞ」とか言われると、ひそかに「よしよし」と思ったり(笑)。

現在の仕事内容は?

絵コンテを描くのはもちろんですけど、最近はストーリーをつくったりコンセプトを出したりっていうことも多いですね。

アニメ監督の魅力とは?

映画と違って、絵に描いたものをそのまま形にできるところがアニメの魅力です。特殊な世界ではあるわけですが、その舵取り役として監督はやりがいがありますね。こだわろうと思えばいくらでもこだわれちゃう世界ですし。かなり好きなことをやってますね、今は。

人を使う立場になって、下の世代に感じることはありますか?

こういうことを言うとよくいるオトナみたいでいやなんですけど(笑)、ちょっとこの業界もハングリーさが足りなくなってきたなとは思いますね。ぼくらのころはアニメ業界自体が未開拓の領域だったせいもあるんでしょうが、自分が出ていけばすごいことができるに違いないって思い込めたんですよ。

まあ自信過剰だったんですけど、そう思わせる余地が(環境に)あったんです。でも、日本の社会全体に言えることでもあるんですけど、いまはおとなになることによって「なにかできる」というよりは「しなければいけない」って義務的に捉える子たちが多いじゃないですか。アニメ業界も同じで、入ってきた時点で自信があまり感じられないんです。もっと思い上がっていいんじゃないのかなあと思うんですけど。


そういう若い人たちに言いたいことは?

「もっと傲慢であれ」ってことですよね。もっと自信過剰でいいんじゃないかなというか、もっと自分を信じろって思います。

ところで現在の収入はどのくらいですか?

いやー、これはむずかしいですね。ちょっとカンベンしてってかんじもありますけど…(笑)まあ並みじゃないかと思いますけどね。この業界は収入が低いことで有名っていうのもあるんですが、ある程度行くとそうでもないよってかんじですかね(笑)。



越智博之さんプロフィール

専門学校在学中にアニメーターとして活動を開始し、現在は業界トップ・クラスの制作会社AICに所属。気鋭のクリエイターとして広範な層から才能を認められており、監督作品『太陽の船ソルビアンカ』は、海外でも高い評価を得ている。