お仕事ファイル 第12回

都市農家
加藤 武
かとうたけし・第4期生

第12回目は、武蔵村山の地元で都市農家を営んでいる加藤武さんです。加藤さんのハウス栽培地にご案内いただきお話をうかがいました。淡々とした語り口ながら、仕事に、趣味に、地域活動に積極的に参加、地元ライフを徹底的にエンジョイする毎日をお聞かせいただきました。
(取材2013.12.12杉山+遊佐)


都市の近郊にこんな広大な畑があるなんて、驚きです。

この一帯の畑地は、全体で東京ドーム10個分ほどの広さがあって、東京都の農業調整区域に指定されています。自分のやっているハウス3棟では、小松菜を中心にほうれん草・大根等々の野菜を無農薬で栽培しています。


どんなところに出荷しているのですか?

主に生協、JA全農(全国農業協同組合連合会)、地元武蔵村山市の給食センターに出しています。無農薬の野菜は生協や給食センターで特に重宝されていて、30軒近くの契約農家で武蔵村山2箇所の給食センターを通して市内14校へ提供されています。

無農薬にこだわっているわけですね。

路地栽培も行っていますが、ハウスについては低農薬の圃場として東京都の承認制度(特別栽培農産物生産ほ場)を受けています。栽培している小松菜・ほうれん草は生協とJA全農に出荷していますが、全農を通して市場に出すと、無農薬野菜も農薬を使った野菜も一緒に扱われてしまうので、残念に感じていました。


その点、生協や給食センターでは無農薬は喜んでもらえます。今では国分寺や東村山の生協直売所にも出荷していて、地元や消費者の声を聞けるので、励みになっていますね。

農業を始めたきっかけは?

私の家は江戸時代から続く代々の地元農家で、自分で10代目になります。ですが、私が農業を始めたのは一旦企業に就職した後でした。高校卒業後は東京農業大学農学部(世田谷キャンパス)に進学し、トヨタに就職して数年勤めた後、父が身体を壊したのをきっかけに家業に就きました。トヨタへの就職は、少しの間遊ばせてもらったようなものですが、社会人としての一般常識を学ばせてもらう良い経験でした。


いまのお仕事で心がけているのは?

父の代の頃は路地栽培のみで、子どもの頃は手伝いもしましたが、正直に言うと、辛いことの方が多かったです。なので自分の代では、安定収入・収益を考え、また、少しでも作業を楽にできないものかと平成4年からハウス栽培を始めました。今でも路地栽培は行っていますが、ハウスは今後も増やしていきたいですね。自分の代になってから色々と勉強したり、試行錯誤しながら無農薬にも挑戦しています。

新しいことに挑戦しているのですね。

無農薬の野菜については「西東京友の会」という勉強会で学びました。農学博士の方が無農薬の耕作を指導していて、そこで化学・物理学・生物学などを総合的に応用した土作り(例えば活性炭を使って保水性を確保するなど)や、実地作業などを勉強しました。目覚めたのが少々遅かった気もしますが、ここではトラクターの運転なども経験して勉強になりました。今では武蔵村山全体で無農薬農業に取り組んでいます。


最近、農業への関心が高まっていますね。

小学生の体験農業や、農業の勉強のためのボランティア受け入れなどを行っています。私の娘が小学3年生なのですが、体験で一緒に種蒔きなどをしました。子どもたちは、自分で蒔いた作物のことになると興味津々です。さらに収穫したものが給食で出ると喜んでもらえるし、手紙をくれたりするので嬉しいですね。生協へは年に2〜3回、栽培方法や作物についてプレゼンを行っています。生協の方が実際に視察に来るので、相手が見える直の反応は張り合いになります。そうそう、練馬区から1人でやって来て、土地を借りて農業を始めた人もいますよ。このあたりは耕作放棄地もほとんどなく、恵まれていますね。

趣味でブラスバンドをやっているそうですが。

中学の頃からのブラスバンドは今でも続けています。立川の市民ブラスバンドの他に、地元武蔵村山ではビッグバンドをやっていて、2~3ヶ月に一度くらい練習会をやっています。私はトランペットですが、妻も一緒にブラバンをやっていて、娘も息子も楽器をやっているので、家族に理解があるというか恵まれていますよね。仲間との演奏会は年に2回程度をしていますが、今は練習する時間が取れないのが悩みの種です。


地域のボランティア活動にも参加されていますね。

いま武蔵村山市消防団の副団長をやっているのですが、礼式や操法(放水)など月1回以上の訓練に加えて、地元の祭りや催しでのデモンストレーション、全国大会への参加などもあります。2014年の出初め式ではハイライトとして、小中学生の少年消防団も参加した八個分団の一斉放水があります。


地域活動に参加する人が減っている中、消防団は貴重な存在では?

消防庁が管轄する消防署がプロ集団ならば、市が管轄する消防団はアマチュアの団体ですが、今の時代に残る地域の唯一の「自警団」的役割も担っている貴重な組織だと思います。団長・副団長・団員が各地域にいるわけですが、自分は副団長なので、村山全体で約200名の部下を抱えていることになります。2年前からは女性団員の指導も始めていて、消防・救急・AEDの取り扱いなどの資格もとるよう指導しています。


地域のまとめ役をいくつも引き受けられています。

農業をやりながら、消防団もPTAやってます。普通は敬遠されがちな役回りまで引き受けるのは確かに大変なのですが、誰かがやらなくてはならないですいよね。地域リーダーとして様々な活動に参加して、仲間や友人をいっぱい増やしたいという思いでやっています。様々な活動を通して本当に色々な仲間に出会うことが出来ました。お陰で、こんな時はコイツに聞けば良いとか、コイツに相談すれば大丈夫などの繋がりが出来ました。お互いに協力し合って新しいことに挑戦したり、もっと向上しよう!という感じです。

仕事も趣味も交流も、地域密着というわけですね。

とにかく忙しい毎日ですが、消防団副団長の任期がそろそろ終わるので、少しゆっくり出来ると思っています。地域での活動は「やり甲斐」、その他の活動は「楽しみ」、地域に根差して様々なことに参加しながらも、自分自身はその中で気の合う仲間を見つけて楽しんでします。仕事、趣味、家族、仲間、全てがここにある。まさに地元密着の人生で、自分は恵まれていると思います。

卒業生には、本当に様々なプロフィールの方がいますね。

その道のプロや、面白い経歴の人が本当に沢山いますよね。1回目のインタビューの佐橋さんとは、ブラバンを通して今でも交流があるんですよ。武蔵村山高校の卒業生たちには、「卒業して切羽詰まったら村校の周りに戻ってこい!」と言いたいですね。教訓的なことを言えば、まず「仲間を大切に」。そして「好きなことをやれ」ですね。大切なのは続けること。最初は分からなくても、続けていればやりたいことが見つかると思うのです。



加藤 武さんプロフィール

武蔵村山市出身。都市農家。

高校卒業後、東京農業大学に進学。トヨタに就職後、家業の農家を継ぐ。

武蔵村山市消防団 副団長

立川市吹奏楽団および地元ビッグバンドに所属

武蔵村山市公立学校PTA連合会 元会長