お仕事ファイル 第14回

レコーディングエンジニア

森元浩二.
もりもとこうじ・第7期生

森元浩二.さんは、多くの人気アーティストの作品を手がけるレコーディングエンジニア。高校時代に選んだ道を第一線で走り続け、現在はエイベックスのチーフエンジアを務めています。そんな森元さんに「仕事の楽しさ」や「大切にしている思い」「森元流好きなことの見つけ方」などについてうかがいました。(取材2017.10.05杉山+児玉)


「レコーディングエンジニア」とは、どんなお仕事ですか?

 ひとことで言えば「録音係」。ミキサーとも言います。ヴォーカルの声やそれぞれの楽器の音を個別に収録した後、音響機器を使って調整し、アーティストの頭の中にある理想の音を再現する仕事です


仕事をするうえで大切なことは?

プロとしての技術はもちろん必要です。でももっと大切なのは「感性」だと思っています。同じ曲でも担当するエンジニアの感性が違えば、当然違う出来上がりになります。曲が魅力を増すかもしれないし、半減するかもしれません。そこがこの仕事の醍醐味であり、難しいところでもあります

今までどんなアーティストの曲を手がけたのですか?

浜崎あゆみ、安室奈美恵、倖田來未、Every Little ThingEXILE、三代目J Soul BrothersSPEED、trf、E-GirlsAAAKinki KidsV6、堂本剛、甲斐バンド、大黒摩季……多くの方と仕事させていただきました。

2003年には浜崎あゆみの「No way to say」が、2015年は三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE Unfair World」がレコード大賞を獲得しました。手がけた作品はどれも思い入れがあるけれど、とくに自分が担当した曲が街で流れたりすると、うれしいですね。

音楽雑誌「サウンド&レコーディング・マガジン」2017年11月号に掲載された森元さんの特集記事


いつ頃からこの仕事に興味を持ったのですか?

兄の影響もあって、中学、高校とバンド活動をしていました。ライブにも出演して、楽しかったです。でも次第に、演奏するより録音作業のほうが面白くなってきたんです。高校生になると、自分が実際に演奏で出せる音と思い描く理想の音との落差が大きくなり、「楽器演奏には向いていない」と自覚し始めました。それもあって録音に熱中するようになり「録音の道に進もう」と決めました。


自分の選択に迷いはありませんでしたか?

 ありません。僕は高校年のときに病気で兄を亡くし、そのとき「人生はいつ終わるかわからない。後悔のないように自分が好きなことをやろう」と強く思ったんです。だから迷いはありませんでした。両親も理解してくれました。高校で年間担任をしてくれた松永先生も、僕のことをよくわかってくれていて「好きなようにしなさい」と見守ってくれました

それ以降、選んだ道をずっと歩いているのですね

 好きなことと向いていることが一致したのは、幸せだと思います。やはり楽しくないと続きませんからね。それを最初に実感したのが、中学生のときでした。父親がソフトボールをしていたので自分もやってみようと入部したものの、上手にできないし、楽しくもない。ツライ経験でした(笑)。父も向いていないと思ったようです。そこで翌年は以前から好きだった写真部に入ったところ、楽しいこと楽しいこと! 自分が好きなことや向いていることに気づくかどうかで、人生は大きく変わってくると思いますよ


向いていることに気づくにはどうすれば?

 僕の場合は兄のこととソフトボール部の経験が大きかったけれど、必ずしも特別なきっかけが必要なわけではないでしょう。冷静に自分を見つめるといいと思います。極端な言い方をすれば「向いていないと思ったら無理しない」のが良いと思います。そして興味を持ったら、とりあえずやってみるといい。行動を起こせば、分かってくるはずです

仕事で悩むことは? 悩んだ時はどうするのですか?

 「もっといい音を出すにはどうすればいいだろう」「仕事の声がかからなかったらどうしよう」など、悩みはいろいろあります。年に何度も挫折している気がします。そして最後は「今まで真っ当にやってきたから、どうにかなるだろう」という結果に落ち着くというパターンです。早い話が神頼みですね(笑)。でも何もしなければ、きっと神様も手を貸してくれません。日頃の積み重ねが解決につながる気がします

ところで高校時代の思い出も聞かせてください

学校ではブラスバンドに所属し、コンテストにも参加しました。残念ながら入賞はできませんでしたが、仲間と練習したのはいい思い出です。先輩や後輩を含め、ブラバン仲間とは今も連絡を取り合っています。同級生たちともLINEでやり取りしたり、年1〜2回会ったりと、付き合いが続いています。

自転車通学もいい思い出ですね。当時住んでいた東大和から片道30分かかりました。雪の日も自転車なので結構たいへんでした。

同窓生にメッセージを!

まず自分が好きなことをやろう! それから感性を大切にして欲しいと思います。同じ体験をしても、そこから学んだり、気づきを得る人もいれば、何も得られない人もいる。今思えば、僕自身、きっと多くの信号を見逃していると思います。もったいないですよね


今後の目標を教えてください

この仕事には定年がありません。僕が尊敬する日本でトップのレコーディングエンジニアは80歳くらいで現役。しかも素晴らしい音を今でも作っています。僕もいい音を作り続けていきたい。これが目標です


森元浩二.さんプロフィール

東大和市出身。レコーディングエンジニア。日本ミキサー協会副理事。

高校時代は、ブラスバンド部でパーカッションを担当。高校卒業後は音楽制作の専門学校や音楽スタジオ勤務などを経て現在、エイベックスのチーフエンジニアを務める。近年は大学生の息子さんがミュージシャンとして活動を展開し、有名アーティストのバックバンドに参加中。

ちなみに「森元浩二.」さんの名前の最後についたドットは「あと一画足したらもっと幸運を呼ぶ」という姓名判断によるもの。すでに30年以上つけているそうです。