お仕事ファイル 第13回

株式会社立川印刷所経営
鈴木 武 さん
すずきたけし・第5期生

今回ご登場いただいた鈴木武さんは、家業の印刷会社の3代目社長。ほかにも、生まれ育った立川の懐かしい風景をテーマにした写真集『立川の風景 昭和色アルバム』の出版、ボーイスカウト活動をはじめ、多様なフィールドで活躍しています。そのパワーの源や地元への愛情についてうかがいました。(取材2016.10.25杉山+児玉)


ご実家の印刷会社を継いだそうですね。

大学卒業後、一旦は違う業界に就職してからここに入りました。会社に自分の好きなものをいろいろ並べているので、よく「いったい何屋さん?」って言われます(笑)。立川の昔の風景の写真集を出版するなど、社業を活かしながらいろいろやっています。

その「立川の昔の風景」に興味を持ったきっかけは?

うちにある古い写真を、デジタル化しようと思ったのが始まりです。昔の写真に写っている普通の風景は、今ではほどんど残っていないんですよね。どこもそうでしょうが、とくに私が生まれ育った立川は区画整理で大きく変わっています。そこで昔の写真をもっと見たいと思うようになり、知り合いに声をかけて集め始めました。

その写真を使って写真集を作ったのですね。

そうなんです。うちは印刷会社なので、せっかく集めた貴重な写真を立川の人に見てもらいたいと思い、まず2007年にカレンダーを作ったんです。それを新聞が取り上げてくれました。その記事をご覧になって写真を持って来てくれる方もいらっしゃって、結構な枚数が集まりました。でもカレンダーだと紹介できる枚数は限られています。もっとたくさんの写真を見てほしいと思い、写真集に着目しました。


出版までで、楽しかったことや苦労したことは?

すべての写真に、ひとことキャプションをつけたんですけれど、この作業が「楽しくもあり苦しくもあり」でした。趣味で作詞作曲をしていたので、文章を書くのは嫌いではないのですが、知っている場所や思い入れがあるものは、すぐ思いついてワクワクします。「もっと面白いことを書きたい」とこだわって、時間がかかることもあったけれど、それも楽しかったです。でも、中には何を書けばいいか困るものもありました。何しろ普通の風景ですからね(笑)。

慣れない作業でたいへんでしたね。

でも、普段と違うことをするのは新鮮です。1冊目はキャプション以外は出版社にお任せしたのですが、2冊目からは写真を選ぶところから手がけています。これがまたたいへん。でもそれだけにやりがいや達成感は大きいですね。

写真集を出版後、どのような反響がありましたか?

年配の方を中心に「懐かしい」と喜んでいただきました。今はデジカメで気軽に写真を撮れるけれど、フイルムの時代はそうはいきませんでした。フイルムは高価でしたから旅行やイベントなど特別な日の写真は撮っても、街の風景といった日常は意外に撮影しなかったのです。「感動した」とお手紙もいただき、出版してよかったと思いました。


地元のボーイスカウトにも参加しているそうですね。

子どもの頃からやっていて、高校時代は、陸上とバンドに専念していたのでお休みしていましたが、大学生の頃からまた接点ができました。今は、指導者を指導するという役回りなので、子どもと一緒に活動する機会は減りましたけれど、それでも小さい子から年配の先輩方という幅広い年代の仲間がいるというのは、楽しいですよ。日々のトレーニングを通じ、自然災害などが起きたときに活躍できる人材の育成に貢献できればと考えています。

立川の写真集にボーイスカウト……地元愛が強いですね。

以前は、いずれ立川を離れるだろうと思っていたんです。でも家業を継いだり、ボーイスカウトの活動に力を入れるようになり、地元にどっぷり浸かっています(笑)。思えば、40歳くらいから写真を集め出して子どもの頃を思い出したりするうち、地元への思いを自覚するようになりました。自分が今のようになったのも、少なからず生まれ育った立川の影響があると思います。

立川は自分のルーツですか!?

そうとも言えますね。たとえば私は、写真集にあるようなアンティークな雰囲気の建物やインテリア、雑貨が好きなんです。これも子どもの頃にボーイスカウトで米軍立川基地の中を何度も見学させてもらったり、カーニバルに出店したりといった、アメリカを身近に感じた経験が潜在的に残っているからかもしれませんね。


ところで、今後の目標を教えてください。

うちの印刷会社は祖父が1930年に立ち上げ、今年創業86年を迎えました。印刷業界は今、なかなか厳しい時代ですけれど、いろいろ工夫をして100周年を迎えられるようにしたいと思っています。


他にもいろいろ考えているのでは?

手元にまだ写真があるので、今後も写真集を出していきたいです。写真を懐かしく見てくれる年代の方々が、元気なうちに出さないといけないと思っています。それから、私たちが若い頃に流行ったものの商品化もしたいですね。どうも私は過去や懐かしいものにこだわる傾向があるようです(笑)。

では最後に、ムサムラ同窓生にメッセージをお願いします。

私の場合、40歳過ぎてから本当にやりたいことを始めた気がします。もっと早く始めれば、もっと何かできたでしょうね。今、その分を取り返さなくちゃ、という感じです。だから、やりたいと思ったら、行動に移して欲しい! 先延ばしにしていると、時間はどんどん過ぎていきますからね。


鈴木 武さんプロフィール

立川市出身。株式会社立川印刷所経営。

高校時代は陸上部で活躍。大学卒業後は、運送会社に就職後、実家の印刷所を継ぐ。

昔の立川をテーマにした写真集『立川の風景 昭和色アルバム』は、現在「その4」まで発売(電子版もあり)。

日本ボーイスカウト東京連盟新多磨(あらたま)地区 地区コミッショナー・立川第10団副団委員長